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2013年8月22日木曜日

誰がヘビィ・メタルを殺したのか?

早速、表題に関して言い訳をしておくと、別にメタルと言う音楽自体もシーンも死んではいない。
ルーツに、あるいはエッセンスとしてその音楽の中にヘビィ・メタルがあるバンドは次々と出て来ているし、純然たるメタルバンドも相当数いると思う。
オレがメタルを聴き始めた90年代半ばはそうじゃ無かった。
特に日本に限って言えばANIMETALの隆盛から再結成ブームが起こるまで、SEX MACHINEGUNS等一部の例外的なバンドを除き、国内にメタルバンドなんて居るんかいな?と言う状況だったし、オレはV系バンドだったりパンク・バンドだったりでも、その中にメタルっぽい要素があれば飛びつく様な音楽生活を送っていたものだ。
(それはマッチのミッドナイト・シャッフルとて例外では無かった)

90年代。
一般的なロック史から考えればNirvanaを初めとするグランジ/オルタナティブと言う冷静に考えればジャンルでもなんでもねぇじゃねーかとつっこみたくなる勢力により、80年代のメタルバンドが次々に行き場を無くしてしまった。そんな時代だろうか。

その意見には反論する気も無いし、全くもってその通りではあるのだが、個人的にはここでもう一つのバンドの名前を上げておきたい。

Panteraだ。


ダイムバッグ・ダレルの変則チューニングのギターから繰り出される無慈悲で先鋭的なリフ、複雑で重いリズム、そしてフィリップ・アンセルモの凶暴なヴォーカル。
その凄まじさたるや、かつて最も過激なメタルと言われていたスラッシュ・メタルすら過去の物とする程であった。
昨今ではPanteraこそ最高のメタル!と言う意見にNoと言う人間は少ないと思われる。

ただ、ちょっと待って欲しい。
オレはメタルの音楽的発展において最後にとどめを刺した戦犯はPanteraではないか?と思うのだ。
(オレも今じゃ好きだけど、当時様式美系のメタル大好きっ子だったオレのPanteraを聞いた時の感想は「うへっ…!」だったしね)
確かにインパクトはあった、Panteraクローンと呼ばれるバンド群も生み出した。
ただヘビィ・メタルと言う音楽と歴史においてPanteraの存在は突然変異的な物であったのではないかと言う事である。
そして問題は、クローンは生んだがクローンでしかない状況を作ってしまったのだ。
かつてIron MaidenらNWOBHMのバンド達の活躍がJudas Priestをメタルゴッドとして躍進させる事に繋がったり、Motley CrueらLAメタル勢がAerosmithにもう一度脚光を浴びせたりした現象が、Panteraにおいてはいくら本人達が先人へのリスペクトを怠らなかったとは言え、無かったんじゃないかと言う事である。
実際、多くのベテランがPantera化に失敗してダメだこりゃってなった訳で、多分あの当時音楽性も特に変えずにPanteraとやり合えたバンドってSlayer位なんじゃね?と思うし…。

そして、Panteraの影響は実はメタルシーンよりもハードコアシーンにおいての方が強かったと記憶している。
実際、日本においても関西あたりのメタリック・ハードコアと言われるバンド達は声高にハードコアを叫びながら、Panteraからの影響を全く隠すそぶりの無い音楽をやっていた訳だし。
(この頃の『メタリックなハードコア』のイメージが強過ぎてその後のKillswitch EngageやShadows Fall辺りのメタルコアと呼ばれるバンドについては「何処がハードコアやねん」と思ったものだし「メロデスはダサイ!ハードコアはかっこいい!」と言ってEmpressを聴いていた友人には「コイツはアホか」と思ったものである。念の為言っとくけどどっちが優れてるとか言う事じゃなくて、あくまでも感性のお話)
さらに重さや過激さを追求したバンドとなるとKornやSlipknot等が挙げられると思うが、これらにしたら(メタルからの影響が強いのは事実だが)日本での紹介のされ方から『ヘビィ・メタルとは別のエクストリーム・ミュージック』と捉えていた。

結局、何が言いたいかと言うとPantera以降革新的なバンドはメタル以外のフィールドに出て行ったし、即ちPantera以降真に革新的なメタルバンドは皆無であると言う事だ。

例えば、2000年代以降においてある種メタルのメインストリームを走っているメロディック・デスメタル等のバンド群はデスメタル・バンドによる80年代正統派メタルへの先祖返りであるし、ドゥームメタル等に関して言えば、それが70年代まで遡って起きた結果だと思う。
結局、Panteraの存在と言うのはそれまでのメタルから3段階位進化した突然変異種であったし、実は昨今の新世代のメタルバンドと呼ばれている多くのバンドは、旧来のメタルからPanteraの出現までに現れるべきバンドだったんじゃないかなと思う。そう言う意味で、Panteraの衝撃とはメタルと言う音楽の範疇で語られる進化の最終地点だったかもしれないし、結果的にメタルの寿命を縮めたのってPanteraだったんじゃないかな?と思うのだ。

我々自身もCREATE OF EXTREMEと言うスローガンを掲げてはいるが、音楽的に言えばメタルの中で語られるべき音楽を標榜していて、別段新しい事をやろうとしてる訳でも、する気も無い訳で(一応言い訳しておくとCREATEとは何も新しい音楽スタイルを作るとかで言ってる訳ではない)最近のバンドに見られる所謂メタルらしさって、80年代メタル的なリフだったりリードギターだったりする事を考えると、音楽的進化においてメタルは死んだって事で良いんじゃないかな?と言った所でこの1時間近く掛かった長文のシメとしたいと思う。

P.S. 12月でダイムバッグ・ダレルが凶弾に倒れて9年になる。オレもオッサンになったもんだ。R.I.P.

KAZZ

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